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保育園・幼稚園・認定こども園の現場 100人インタビュー vo.1 〜元公立保育園の保育士に聞いた、本当に時間を使いたい仕事〜

保育現場でAIを使うと聞くと、少し不安になる人もいると思います。

「本当に必要なのはAIなのでしょうか?」

私自身、保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビューを続けながら、「AIは現場のどこまで入っていいのだろう」と考えています。

このインタビューは、AIを保育現場に広めるために行っているものではありません。先生たちが実際に何に困り、何を大切にして働いているのか。その声を聞いたうえで、本当に必要な仕組みを考えるための企画です。

今回のお話を聞いたのは、2024年まで公立保育園で働いていた元保育士の方です。現在は保育現場を離れ、AIを使いながらLP制作やコーディング、画像制作などを独学で学び、在宅で仕事をしています。

話を聞く前は、公立保育園のデジタル化やAI活用について聞くつもりでした。でも、最後に残ったのはもっと根本的な問いでした。「保育士は、本当は何に時間を使う仕事なのか」という問いです。

児童票も、要録も、連絡帳も、週案も手書きだった

先生が働いていた公立保育園では、かなり多くの書類が手書きだったそうです。

退職する少し前になって、ようやく月案や年間計画をパソコンで作れるようになったといいます。
それ以外でパソコンを使うのは、お便りや会議の議事録くらいでした。当然、仕事にはかなり時間がかかります。

しかも、公務員なので、本来は個人情報を含む書類を家に持ち帰ってはいけません。それでも仕事は終わりません。そのため、実際には持ち帰って仕事をすることもあったそうです。ルールでは禁止されている。でも、時間内には終わらない。この矛盾を、現場側が抱え込んでいました。

パソコンになっただけで「やったー」と思った

月案などをパソコンで作れるようになったとき、現場の反応はどうだったのか聞いてみました。

返ってきたのは、「やったーですよ。やったー、やったー」という言葉でした。理由はシンプルです。
前年度のデータをコピーできるからです。

歌や活動内容など、その年の子どもたちに合わせて変える部分だけを書き直せばいい。一から全部手書きする必要がなくなりました。それだけでも、かなり負担が減ったそうです。

一方で、こんな話もありました。

先生たちが時間をかけて一生懸命作った計画書でも、監査では短時間で確認されて終わることがある。もちろん、監査のためだけに書類を作っているわけではありません。

ただ、現場の負担感として、「ここまで時間をかけて作る必要があるのだろうか」と感じる場面があったことは伝わってきました。

「保育士しかできない」と思っていた

ご本人自身、保育士時代はパソコンが得意だったわけではありません。むしろ、自分も苦手な側だったと話しています。ところが退職後、在宅で働こうとしたときに、パソコンを使えないことが大きな壁になりました。

そこで、独学で学び始めました。分からないことはAIに聞く。LPの作り方も、コーディングも、画像制作も、必要になるたびに調べて実際に仕事をする。そうして現在では、複数の仕事につながっています。

ご本人は、「保育士しか働けないのが嫌だった」と話していました。これは印象に残りました。

専門職として働いていると、その仕事以外のスキルを身につける時間が取りにくくなります。実際、この方も保育士として働いている間は、毎日の仕事に追われて、自分のために勉強するところまで手が回らなかったそうです。退職して初めて、新しい仕事を学ぶ余裕ができた。

そしてAIが、その学びを助けてくれました。

AIを使うなら、まず文章を整えてほしい

もし今、もう一度保育現場で働くなら、AIを使いたいか。

そう聞くと、「使いたいですよね」という答えでした。特に使いたいのが、文章作成です。

保育士が書く連絡帳は、保護者の手元に残ります。そして、文章の受け取られ方によっては、「先生、こう書いてありますけど、どういう意味ですか」と確認されることもあります。内容そのものは間違っていなくても、表現が強く見えたり、意図とは違う意味で受け取られたりすることがあります。

そこで、自分が書いた文章をAIに渡して、「保護者に伝わりやすい表現にしてください」と整えてもらう。

こうした使い方には、かなり可能性を感じていました。ただし、子どもの個人情報をそのまま外部のAIサービスに入力するわけにはいきません。公立園では特に、情報管理のルールが厳しく、パソコンがオフライン環境で使われていることもあります。

AIを使えばいい。そんなに簡単な話ではありません。セキュリティや自治体側の仕組みまで整えなければ、現場だけでは進められない問題があります。

年長担任が1月から3月まで抱える「要録」

AI活用の話のなかで、特に具体的だったのが「要録」の話です。年長児の担任は、小学校に引き継ぐための書類を作成します。この作業が、とても大変だそうです。特に難しいのは、言葉の選び方です。子どもの姿を正確に伝えなければいけない。

でも、表現によっては保護者が見たときに気になる内容になるかもしれない。一人ひとりについて考えながら文章を作る必要があります。この方自身、この作業に1月から3月までかなりの時間を使うそうです。

そして、「要録が大変だから、年長担任を持ちたくない」という先生もいると話していました。

これを聞くと、AIで文章の下書きを作ることは、かなり現実的な支援に見えます。

もちろん、AIが子どもを見ているわけではありません。子どものことを知っているのは先生です。でも、先生が把握している事実や振り返りを入力し、それを適切な文章に整える部分まで、先生が一から全部やる必要があるのでしょうか。ここは分けて考えてもいいのかもしれません。

「考えること」と「文章を書くこと」は同じなのか

今回、私から開発中のAIツールについても話しました。過去の指導案などをもとに、月案・週案・日案のたたき台をAIで作る仕組みです。

ただ、開発しながら悩んでいることがあります。経験のある先生なら、AIが作った案を見て、

「このクラスには合わない」「ここは直そう」と判断できます。

でも、新人の先生の場合、
「AIが出したから、これでいいのだろう」と、そのまま使ってしまう可能性があります。

それでは、先生自身が考えなくなるのではないか。そんな話をすると、この方から返ってきたのは、「考えることが正義という考え方にこだわりすぎなくていいのではないか」という意見でした。

もちろん、子どものことを考えなくていいという意味ではありません。重要なのは、何について考えるのかです。

  • 七夕の活動をする
  • 笹飾りを作る

そのために必要な計画書の文章を、一から何時間もかけて作る。そこまで人間がやる必要があるのか。AIに案を作ってもらい、実際に保育をしてみる。うまくいかなかったら振り返る。その振り返りを次の計画に反映する。

こちらのほうが、むしろ本来の「考える仕事」に近いのかもしれません。

書類作成はAIに任せて、「動くのは人間」

今回のインタビューで、とても印象に残った言葉があります。

「書類作成はAIに任せて、動くのは人間」という考えです。

保育という仕事は、人と人が関わる仕事です。子どもの表情を見る。今日はいつもより元気がないと気づく。友達との関係を見守る。保護者の話を聞く。集団活動に入れない子がいたら、その子にどう寄り添うか考える。

こうしたことは、AIが代わりにやってくれる仕事ではありません。

一方で、週案を書く。月案を書く。要録の文章を整える。会議資料を作る。研究発表の文章をまとめる。こうした仕事の一部は、AIでも補助できるようになっています。

では、人間にしかできない仕事に、もっと時間を戻したほうがいいのではないか。
今回の話を聞いて、ぼく自身の問いも少し変わりました。

「AIを使うと保育士が考えなくなるか」ではなく、「保育士には、何について考える時間を残すべきなのか」と考えたほうがいいのかもしれません。

事務や雑務が増えすぎて、子どもを見る時間が減っている

インタビューの最後に、保育業界を良くするなら何を変えたいか聞きました。

そこで出てきたのが、仕事量と人間関係の話でした。

ご本人の感覚では、保育士として働いているのに、「事務や雑務に使う時間のほうが、子どもに関わる時間より多い」と感じる場面があったそうです。

  • 保護者対応
  • 書類
  • 製作
  • 行事準備
  • 会議

ほかにもやることはたくさんあります。

その結果、本来もっと見てあげたい子どもを、十分に見られないことがあります。問題行動がある子や、けがにつながりそうな子に注意が集中し、落ち着いて活動している子を十分に認めてあげられない。そんな葛藤も話していました。

ここは、AIだけでは解決できない話でもあります。

最後に残るのは、人の問題だった

さらに、この方自身が保育士を辞めた大きな理由の一つは、人間関係でした。新人や実習生に厳しく当たる職員。昔からの保育観を強く求める先輩。子どもに寄り添いたくても、「集団行動なのだから連れてきなさい」と言われる環境。

そうした職場では、若い先生が疲れて離れていってしまいます。

ご本人は、保育士資格を持ちながら医療事務など別の仕事に進んだ人も身近にいると話していました。ここはAIでは直せません。書類がすべて自動化されても、人間関係が悪ければ働き続けるのは難しいです。

むしろAIによって事務仕事が減れば、「人間にしかできない仕事とは何なのか」が、今まで以上にはっきりしてくるのかもしれません。

  • 子どもに向き合うこと
  • 保護者に向き合うこと
  • 後輩に教えること
  • 困っている同僚を助けること

そこに、人が時間を使える職場を作る。そのためのAIなら、現場に入る意味はありそうです。

AIを入れることが目的ではない

100人インタビューは、AIを普及させるために行っている企画ではありません。現場に何が必要なのかを知るために、直接話を聞いています。

今回の話を聞いても、「すべてAIにすればいい」という結論にはなりませんでした。

個人情報の問題があります。新人育成の問題もあります。
そもそも職場の人間関係という、AIではどうにもならない問題もあります。

ただ、「人がやらなくてもいい仕事に、人の時間を使いすぎていないか」という問いは、これから考えていきたいと思います。

AIに仕事を奪わせるのではなく、人間に時間を返す。そして、その時間を子どもに使う。今回のインタビューから見えてきたのは、そんなAI活用の形でした。引き続き、現場の声を聞いていきます。



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