コラム
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保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー vo7. 〜若手保育士は、なぜAIを使っていることを隠したのか。転職先で見えた「使える職場」と「使えない職場」の違い〜
保育現場でAIを活用するには、何が必要なのでしょうか。ChatGPTの使い方を覚えること。便利なサービスを導入すること。職員向けの研修を行うこと。もちろん、どれも役に立つでしょう。 でも、今回のインタビューでは、それ以前の問題が見えてきました。「AIを使っていることを、職場で言えるかどうか」という問題です。 今回の「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」でお話を聞いたのは、保育園や幼稚園で長く働き、現在は児童発達支援施設に勤務している方です。 以前の保育園では、若い先生が園長に知られないようにAIを使っていました。一方、現在の児童発達支援施設では、職員がChatGPTを堂々と活用しています。同じ保育・子ども支援の仕事でも、職場が変わると、ここまで違うのか。話を聞いていくと、AIの導入以前に考えるべき、職場の仕組みや人間関係が見えてきました。 園長に認めてもらえる文章が書けない 以前の保育園で、ある若い先生が書類作成に悩んでいたそうです。園長から文章表現について厳しく指導され、何度書き直しても、なかなか認めてもらえない。毎日のように、「どう書けばいいのだろう」と悩んでいました。 保育の仕事では、文章を書く機会がたくさんあります。 日々の記録。月案や週案。子どもの成長の記録。保護者への連絡。 ただ文章として正しければいいわけではありません。園によって求められる書き方が違うこともあります。経験の浅い先生にとって、これは簡単な仕事ではないでしょう。その若い先生も、どうすればいいか分からなくなっていたそうです。そこで、誰にも言わずにAIを使い始めました。 急に文章が上達した理由は、AIだった しばらくすると、その先生が書く文章が大きく変わりました。以前よりも分かりやすく、きれいにまとまるようになったのです。今回お話を聞いた方は、その変化に気づきました。「本を写したの?」そう尋ねると、若い先生は事情を話してくれました。 自分ではどうしようもなくなり、AIを使って文章を作っていたのです。実際に内容を見てみると、よくまとまっていました。本を調べながら一から文章を考えるよりも効率的で、時間の短縮にもつながっていたそうです。 そこで本人は、「正しく使えば、素晴らしいツールだ」と感じました。ただし、問題が一つありました。その若い先生は、AIを使っていることを園長には言えなかったのです。 園長は「渡した本のおかげ」だと思っていた 園長は、若い先生に文章の参考になる本を渡していました。そのため、急に文章が上達したことについても、「渡した本を読んで、書けるようになった」と思っていたそうです。 でも、実際にはAIを使っていました。若い先生は、AIを使ったことを責められるのが怖くて、黙っていたのです。この話は、かなり印象に残りました。 AIを使って仕事が早くなった。文章も改善された。本人も助かっている。 それなのに、職場では使っていることを言えない。もちろん、AIが作った文章をそのまま使っていいとは限りません。実際の子どもの姿に合っているか、内容が正しいか、確認する必要があります。でも、今回の話では、その使い方を相談すること自体が難しかったのです。これでは、AIを正しく使うためのルールも作りにくいでしょう。 転職先では、ChatGPTを堂々と使っている ところが、現在の児童発達支援施設では状況が大きく違います。施設全体でAIの活用が認められています。ChatGPTを使って、子どもたちのための絵カードを作る。お便りの文章を考える。必要なものを作成して印刷する。 こうした使い方が、日常的に行われています。 絵カードは、子どもが一日の予定や活動の流れを視覚的に理解するために使うものです。言葉だけでは伝わりにくいことも、絵にすることで分かりやすくなる場合があります。その準備をAIが手伝っています。以前の園では、AIを使っていることを隠していた。現在の施設では、職員が普通に使っている。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。 AIに詳しい人がいるだけではなかった 現在の施設には、パソコンや事務業務を担当する職員が一人いるそうです。その人がフォーマットを準備する。必要なファイルを整理する。ほかの職員が使いやすいように共有する。 こうした役割があることで、現場の先生たちも迷わず仕事を進められています。 これは、AIの活用だけに限った話ではありません。以前の保育園では、パソコンを導入したことで、かえって困ることもあったそうです。その理由を聞くと、デジタル化の難しさがよく分かりました。 パソコンを導入したら、仕事が見えなくなった 以前の保育園では、各クラスにパソコンが導入され、月案や週案などを少しずつデジタル化しようとしていました。 ところが、職員の中には、「手書きのほうがいい」という声もありました。単にパソコンが苦手だったからではありません。手書きの書類なら、机の上に広げてあるものを見るだけで、どこまで進んでいるか分かります。 ほかの先生も、「まだここまでしか終わっていないなら、手伝おうか」と声をかけやすい。でも、パソコンの場合は違います。画面に向かっている先生が、何をどこまで進めているのか、周囲からは分かりません。本人だけがファイルの場所を知っている。ほかの先生は、どこに保存されているか分からない。こうした状況が起きていました。 デジタル化によって、書類の修正は楽になりました。でも、仕事の進み具合や情報の共有は、以前より難しくなった部分もあったのです。 「手書きのほうが早い」には理由があった 以前の園では、パソコンの使い方が十分にマニュアル化されていませんでした。ある先生は、前の勤務先で使っていたUSBのフォーマットを持ってきて作業していました。ほかの先生は、どこに何が保存されているのか分かりません。 パソコンに慣れていない先生は、画面に向かっていても、なかなか仕事が進まない。その結果、「これなら手書きのほうが早い」という声が出ていました。 ここで考えたいのは、手書きとパソコンのどちらが優れているかではありません。「みんなで仕事を進める仕組みがあるか」ということです。 ファイルの保存場所が決まっている。誰でも同じフォーマットを使える。困ったときに相談できる。進捗を共有できる。 こうした仕組みがなければ、パソコンを入れただけでは仕事は楽になりません。むしろ、現場の負担が増えることもあるのでしょう。 以前の幼稚園では、手書きとパソコンの役割が明確だった この方は、以前に約8〜9年間、幼稚園で働いた経験もあります。そのころは、クラスだよりだけをパソコンで作り、それ以外の書類は基本的に手書きだったそうです。 今から考えると、かなりアナログな環境です。ただ、何をパソコンで作り、何を手書きにするのかが明確でした。そのため、運用そのものに大きな混乱は感じていなかったといいます。 もちろん、問題がなかったわけではありません。 パソコンは共有でした。使いたくても順番が回ってこない。若い先生が先輩に遠慮して使えない。 そんなこともありました。それでも、仕事の進め方は分かりやすかった。一方、最近の園では、デジタル化を進めようとする途中で、手書きとパソコンの役割が曖昧になっていました。新しい仕組みを入れるときには、古い仕組みをどう変えるのかまで考える必要があるのでしょう。 連絡帳は手書き、写真はアプリ。仕事が二重になっていた 保護者との連絡にも、同じ問題がありました。以前の保育園では、コドモンを無料の範囲で使っていました。行事や日々の出来事の写真などは、アプリで共有します。 一方で、その日の子どもの様子を伝える連絡帳は、毎日ノートに手書きしていました。つまり、手書きの連絡帳とアプリへの投稿を両方行っていたのです。 保護者からすれば、丁寧に情報を伝えてもらえる環境です。でも、先生の仕事は二つになります。本人も、「保護者対応としては手厚いけれど、保育側としては負担が大きい」と感じていました。 保護者へのサービスを増やすことと、職員の負担を減らすこと。この両立は、簡単ではありません。新しい仕組みを追加するときには、「何を新しく始めるか」だけでなく、「代わりに何をやめるか」も考える必要がありそうです。 発達支援を学ぶために、保育園を離れた 今回の方は、現在、児童発達支援施設で働いています。転職した理由にも、印象的な話がありました。長年保育の仕事を続ける中で、クラスに発達がゆっくりな子どもが増えてきたと感じていたそうです。その一方で、自分自身の仕事についても考えるようになりました。 おむつ交換など、日々の保育業務を繰り返しているだけでは、自分の専門性が広がらないのではないか。もっと新しいことを学びたい。そう考えるようになったといいます。 そこで選んだのが、発達支援の仕事でした。発達支援の専門的な知識や経験を身につければ、将来また保育の現場に戻ったときにも役立つ。そんな考えがあったそうです。保育園を離れることが、保育の仕事を諦めることとは限りません。別の場所で学び、専門性を高める。そういうキャリアの作り方もあるのでしょう。 難しいクラスを担当しても、評価が変わらない 転職の背景には、保育業界の評価に対する疑問もありました。本人は長年、「仕事ができる先生ほど、負担が偏りやすい」と感じていたそうです。 支援が必要な子どもが多いクラスを担当する。対応が難しい子どもを複数受け持つ。保護者とのやり取りも増える。 それでも、比較的落ち着いたクラスを担当する先生と、給与や評価が変わらないことがある。そうした状況に、不公平さを感じていました。もちろん、クラスの大変さを単純に比較することは難しいでしょう。目に見えにくい仕事もあります。ただ、負担の大きい仕事を引き受けた人が、適切に支えられているのか。その仕事を通して身につけた専門性が、評価されているのか。これは考える必要がある問題だと思います。 突然の雇用の変化が、次の働き方を考えるきっかけになった 本人が新しいスキルを学び始めた背景には、もう一つ出来事がありました。以前の園で赤字経営による代表交代があり、扶養内で働くパート職員が一斉に解雇されたそうです。その経験をきっかけに、「この先、どうやって働いていこうか」と考えるようになりました。 そこでオンラインスクールで学び始めました。 SNS運用。AI活用。動画編集。ライティング。 保育以外の仕事にもつながるスキルです。 さらにクラウドワークスに登録し、保育士資格やこれまでの経験を生かせる仕事にも取り組んでいます。目指しているのは、単に副収入を得ることではありません。ライフステージが変わっても、働き続けられる力を身につけることです。 保育士の経験を、別の場所でも生かせるように 保育士として長く働いてきた人には、さまざまな経験があります。 子どもの発達を理解すること。保護者と関係を築くこと。子どもの様子を文章で伝えること。活動を考えること。相手に合わせて説明すること。 こうした経験は、園の外でも役立つ可能性があります。 今回の方は、発達支援の仕事を通して専門性を広げています。同時に、SNSやライティングなども学んでいます。保育の経験を土台にしながら、新しい働き方を探しているのです。「保育士を続けるか、辞めるか」という二択ではなく、「保育士として培ったものを、どこでどう生かすか」という考え方もできるのだと思います。 AIを使える職場は、何が違うのか 今回のインタビューを振り返ると、二つの職場の違いが印象に残ります。以前の保育園では、若い先生がAIを使っていることを隠していました。現在の児童発達支援施設では、AIを使うことが認められています。 以前の園では、パソコンを導入しても、ファイルの保存場所や進め方が統一されていませんでした。現在の施設では、事務を担当する職員がフォーマットを整え、ほかの先生が使いやすいようにしています。 ここから見えてくるのは、「新しい技術を使えるかどうかは、個人の能力だけでは決まらない」ということです。 相談できる人がいる。使い方が共有されている。仕事の進め方が決まっている。新しいものを試しても責められない。 こうした環境があって、初めて便利な技術を安心して使えるのでしょう。 AIを導入する前に、職場を整える必要があるのかもしれない 私は、保育現場の業務改善について考えるとき、どうしても新しいツールに目が向きます。 書類をAIで作れないか。連絡帳を短時間で書けないか。制作物の準備を効率化できないか。 もちろん、どれも必要でしょう。 でも、今回の話を聞いて、それだけでは足りないと感じました。 AIを使って文章が上達しても、それを隠さなければいけない職場があります。パソコンを導入しても、かえって情報共有が難しくなる職場があります。 一方で、特別に複雑な仕組みを使わなくても、職員同士で役割を分け、堂々とAIを使えている施設もあります。違いを生んでいるのは、技術だけではありません。職場の考え方と、仕事を進める仕組みです。 AIを使うことを認める。困ったときに相談できるようにする。ファイルやフォーマットを共有する。そして、AIが作ったものを人が確認する。 こうした土台がなければ、便利なサービスを導入しても、十分に生かせないのかもしれません。今回の話から、新しい問いが生まれました。「保育士がAIを使えるようになるには、AIの使い方を教える前に、何を変える必要があるのか」便利な技術を作るだけでなく、それを安心して使える職場をどう作るのか。「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で、引き続き考えていきたいと思います。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

「園児が集まらない……」そんな園こそInstagramを活用すべき3つの理由
「園の定員に空きがあるのに、入園希望者が集まらない……」園の先生や経営者の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。弊社が実施したアンケートでは、70%以上の園が「新規園児募集に課題を感じている」と回答しました。 園児募集の悩みは、多くの園に共通する課題です。保育の内容には自信がある。先生たちも熱心で、園の雰囲気もいい。それでも入園希望者が増えない。こうした場合、園そのものに問題があるとは限りません。見直したいのは「保護者さんとの接点」です。どれだけ魅力的な園でも、その存在や魅力を知ってもらえなければ、入園先の候補には入りません。そこで活用したいのがInstagramです。Instagramを活用すれば、入園先をまだ決めていない保護者さんにも、園の情報を届けられます。日々の保育や先生たちの様子、園の雰囲気も伝えられます。 この記事では、園児募集にInstagramが効果的な3つの理由を紹介します。あわせて、成果につながる運用の考え方も解説します。 園児募集にInstagramが効果的な3つの理由 園児募集にInstagramが効果的な理由は、次の3つです。 入園先を決める前の保護者さんと接点を作れる 子育て世代との接点を作りやすい 写真と動画で「園の空気」を伝えられる それぞれ詳しく見ていきましょう。 理由①|入園先を決める前の保護者さんと接点を作れる 保護者さんは、園を選ぶときに、いきなり見学を申し込むわけではありません。 一般的には、次のような流れで園を選びます。 スマートフォンで情報を集める 気になる園を探す ホームページを見る 見学を申し込む つまり、保護者さんが園を知り、興味を持つきっかけは、見学よりも前に生まれています。 この段階でInstagramを日常的に発信していれば、保護者さんに次のように感じてもらえます。 「近所にこんな園があるんだ」 「先生たちの雰囲気がよさそう」 「こういう保育をしている園なら、一度見学してみたい」 入園募集が始まってから慌てて発信しても、十分な接点は作りにくいでしょう。普段から保護者さんとの接点を作っておくことが大切です。 理由②|子育て世代との接点を作りやすい Instagramは、子育て世代にも広く利用されているSNSです。園児募集で情報を届けたい保護者さんと接点を作りやすいことは、大きなメリットです。チラシや地域の掲示板は、伝えられる情報量に限界があります。Instagramなら、園の日常を継続的に発信できます。一度見てもらって終わりではなく、何度も園の様子に触れてもらえます。 この積み重ねによって、保護者さんの園への認識は少しずつ変わっていきます。 「名前を聞いたことがある園」 ↓ 「なんとなく雰囲気を知っている園」 入園先を検討するときに思い出してもらえる状態を、普段から作っておきましょう。 理由③|写真と動画で「園の空気」を伝えられる 園選びで保護者さんが知りたいのは、施設や保育方針だけではありません。 次のような「園の空気」も、重要な判断材料になります。 先生たちはどんな人なのか 子どもたちはどんな表情で過ごしているのか 園内はどんな雰囲気なのか Instagramなら、こうした園の空気を写真や動画で伝えられます。 機能ごとの使い分けの例は、次のとおりです。 写真投稿:日々の保育、行事、給食、制作物など リール:園内の様子、園庭あそび、先生の紹介など ストーリーズ:見学会のお知らせ、募集状況、日々のちょっとした出来事など もちろん、すべての機能を使う必要はありません。「動画編集まで手が回らない」という園なら、まずは写真中心で始めましょう。大切なのは、無理なく続けることです。そして、「この園に子どもを通わせたら、どんな毎日になるのか」をイメージしてもらうことです。 Instagramを投稿しているのに園児募集の成果が出ない理由 「うちもInstagramはやっている。でも、園児募集にはつながっていない」という園もあるでしょう。Instagramは、ただ投稿すれば園児募集につながるわけではありません。 次のような運用では、成果につながりにくくなります。 フォロワー数を増やすことだけを目標にしている 行事の写真をなんとなく投稿している 園児募集につながるInstagram運用で考えたい3つの問い 成果につながる運用のために、次の3つを考えてみましょう。 誰に見てもらいたいのか その人に何を感じてもらいたいのか 投稿を見たあと、どんな行動をしてほしいのか フォロワー数より「見学・説明会までの導線」を重視する 園児募集が目的なら、フォロワー数や「いいね」の数だけを追いかける必要はありません。大切なのは、園の近隣に住む入園対象の保護者さんに情報を届けることです。 そのうえで、次の流れを作りましょう。 Instagramを見る 園に興味を持つ ホームページを見る 見学・説明会を申し込む Instagram運用そのものが目的にならないように注意しましょう。 まとめ|園児募集は「知ってもらう」ところから始まる 園児募集にInstagramを活用するメリットは、SNSで目立てることではありません。入園先を本格的に探し始める前から、保護者さんとの接点を作れることにあります。園の良さは、知ってもらえなければ伝わりません。保護者さんが入園先を探し始めた瞬間に、初めて知ってもらうのでは遅いこともあります。「あ、この園、Instagramで見たことがある」という状態を作れているほうが強いでしょう。 まずは1投稿からでも構いません。「保護者さんに、もっと知ってほしい園の日常は何だろう?」という視点で、発信する内容を考えてみてください。すでにInstagramを運用しているのに、見学や問い合わせにつながっていない園もあるでしょう。その場合は、「投稿数」ではなく「導線」を一度見直してみましょう。 よくある質問(FAQ) Q1. 保育園・幼稚園がInstagramを始めたら、園児募集の効果はすぐ出ますか? 短期間で成果を出すことだけを目的にした運用は、おすすめしません。保護者さんが園を検討する時期は限られています。その時期になって初めて発信するのでは間に合いません。普段から情報を届け、検討するときに「知っている園」になっていることが重要です。 Q2. 園児募集のためのInstagramに、フォロワーは何人必要ですか? 園児募集では、フォロワー数そのものを目的にする必要はありません。全国の1万人に見てもらうより、園の近隣に住む入園対象の保護者さん100人に見てもらうほうが価値がある場合もあります。「何人に見られたか」だけでなく、「誰に届いているか」を確認しましょう。 Q3. 園のInstagramに園児の写真を投稿しても問題ありませんか? 園児の写真を掲載する場合は、事前に保護者さんから写真掲載の同意を確認してください。園内で明確な運用ルールを作っておくことも重要です。顔が映らない構図にする、後ろ姿を使うなど、プライバシーに配慮して運用しましょう。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー vo6. 〜子育てを支える保育士が、自分の子育てと両立できない。時短勤務を希望して見えたこと〜
保護者が安心して仕事に行けるように、子どもを預かる。そのために保育士が働いています。では、その保育士自身が親になったとき、同じように子育てと仕事を両立できているのでしょうか。 今回の「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」でお話を聞いたのは、幼稚園や保育園で働いた経験を持ち、2人目のお子さんの出産を前に退職した方です。 本人は、保育という仕事そのものには大きなやりがいを感じていました。それでも職場を離れました。きっかけは、「育休から復帰したら、時短勤務にしたい」と相談したことでした。 1人目の子育てをしながら、フルタイムで働いていた 1人目のお子さんを育てながら、約3年間働いていました。夫も仕事が忙しく、家庭ではほぼワンオペに近い状態だったそうです。それでもフルタイムの正社員として働いていました。そして2人目を妊娠しました。1人目の子育てと仕事を両立してきたからこそ、「このまま2人を育てながらフルタイムで働くのは厳しい」と感じました。 そこで、2人目の育休から復帰するときには、正社員のまま時短勤務にしたいと職場へ相談しました。当初は、「正社員のまま時短勤務を利用できる」という話だったそうです。制度としては使える。本人も、その前提で復帰を考えていました。ところが、実際には簡単ではありませんでした。 「みんな時短になったら、保育が回らない」 この園では、時短勤務の制度が導入されたばかりでした。前例がほとんどありません。さらに、同じ時期に産休に入る職員がほかにも2人いました。 そこで上層部から出てきたのが、「全員が時短勤務になったら、保育が回らない」という反応でした。園側からすれば、人員配置の問題があります。夕方まで保育は続きます。早く帰る職員が増えれば、その時間帯を誰かが埋めなければいけません。簡単な問題ではないでしょう。 ただ、本人にとっては、「利用できる制度だと思っていたのに、実際に使おうとしたら歓迎されなかった」という経験になりました。次第に、「自分から辞めると言うのを待たれているように感じた」といいます。本人はそれを、マタニティハラスメントに近い状態だったと振り返っていました。そして最終的に、産休・育休から復職するのではなく、退職することを選びました。 子育てを支える職場なのに この話を聞いて、一番引っかかったのはここでした。 保育園・幼稚園・こども園は、子どもの育ちを支え、子育てをする家庭を支える場所です。でも、その保育園・幼稚園・子ども園で働く職員が子どもを産み、「子育てと両立するために勤務時間を短くしたい」と希望すると、現場が回らなくなる。これは、かなり難しい問題です。 園側だけを責めれば解決する話でもありません。人員に余裕がなければ、誰かが早く帰ることで、残る先生の負担が増えます。だから現場から反発が出ることもあるでしょう。 でも、「制度はあるけれど、実際には使いにくい」状態では、結局その制度が機能していません。働く保護者を支える仕事だからこそ、そこで働く人の子育ても支えられる環境であってほしい。今回の話から、そんな問いが出てきました。 保育という仕事自体は好きだった 退職したと聞くと、「保育の仕事が嫌になったのかな」と思うかもしれません。でも、そうではありませんでした。事前アンケートでも、仕事そのものについては満足していると答えています。理由はシンプルです。「子どもが好きだから」です。 我が子だけではなく、ほかの家庭の子どもの成長も見守れる。できなかったことが、できるようになる。昨日とは違う姿を見ることができる。そこには大きなやりがいを感じていました。 つまり今回の退職は、「保育が嫌だったから辞めた」という話ではありません。好きな仕事でも、働き方が合わなくなれば続けられない。ここはかなり重要だと思います。 以前の幼稚園は、かなり働きやすかった 本人には、結婚前に勤めていた幼稚園での勤務経験もあります。その園については、「人間関係も職場環境もかなり良かった」と話していました。退職した理由も、職場への不満ではなく、結婚に伴う引っ越しでした。 そのため、どうしても直近の保育園と比べてしまったそうです。直近の園では、かなり細かなルールがありました。ドアをノックする回数。職員の髪色。アクセサリー。時計。お中元やお歳暮。こうした部分まで細かく決められていたといいます。一つひとつだけを見れば、小さなことかもしれません。でも、本人が強く感じていたのは、「職員が大切にされていない」ということでした。 ルールが多いことより、「誰のためのルールなのか」 ルールそのものが悪いわけではありません。子どもの安全を守るためのルールは必要です。保護者から信頼されるための身だしなみも必要でしょう。ただ、「なぜそのルールがあるのか」が分からなくなると、働く人にとっては負担になります。本人の話では、経営側の支出と職員への還元のバランスにも不満がありました。キャリアアップ研修に関連する手当の申請を止められたこともあったそうです。本人が感じていたのは、「職員に厳しい一方で、職員への還元には消極的」という構造でした。時短勤務の問題も、単独の出来事ではなかったのでしょう。それまで積み重なっていた違和感の先に、退職という判断があったのだと思います。 デジタル化は、かなり進んでいた 一方で、この園では業務のデジタル化は比較的進んでいました。パソコンを使って書類を作ることが多く、本人はタイピングが得意だったため、「かなり楽だった」と感じていたそうです。 以前働いていた幼稚園では、書類や行事案内などに手書きが多く、時間を取られていました。そこから考えると、パソコンで作業できる環境はかなり助かっていました。ただし、デジタル化していても時間がかかる仕事は残ります。その一つが、3歳未満児の連絡帳でした。 デジタルでも「人数分の文章を考える仕事」は残る 連絡帳自体はパソコンで入力できます。でも、文章を考える必要はあります。子ども一人ひとりについて、今日何をしていたのか。どんな様子だったのか。保護者にどう伝えるのか。人数分、文章を作ります。入力が手書きからパソコンに変わっても、「何を書くか考える時間」そのものは残ります。 園では、作った文章を主任に見せ、確認してもらう運用もありました。だから本人は、「文章作成を短くできるなら、AIを使ってみたい」と話しています。AIで全部作るのではなく、文章をまとめる。表現を整える。誤字を確認する。こうした補助として使いたいという考えです。 「AIに任せればいい」ではない 今回、保育士向けのAIツールについても意見を聞きました。月案。週案。お便り。こうした文章をAIで作る仕組みです。 本人は、「かなり便利だと思う」と評価していました。特に、文章作成が苦手な先生にとっては助かるのではないかと話しています。ただし、全面的にAIへ任せる考えではありませんでした。 一人ひとりの子どもの成長を見ること。その子らしさを理解すること。人間味のある保育をすること。そこまでAIに任せるべきではない。AIで減らせる仕事は減らしながら、「人が見るべきところは、人が見る」という考えです。 ここは、この100人インタビューで何度も出てきている論点でもあります。 AIを使うか、使わないか。ではなく、「何をAIに任せて、何を人がやるのか」を決めることが必要なのでしょう。 「保育士しかできない」と思ってしまう 退職後、本人は新しい働き方を探しています。保育士に戻りたい気持ちもあります。でも、できればこれまでの経験を活かしながら、在宅で仕事をしたい。そこでクラウドワークスに登録し、保育や子育てに関する記事を書く仕事も始めました。 本人が話していたのが、「保育士を続けていると、保育しかできないと思ってしまう」という感覚です。これは、これまでのインタビューでも出てきた話です。保育という専門職で長く働くほど、「自分にはこれしかない」と思いやすくなる。転職しようとしても、自分の経験をほかの仕事にどうつなげればいいか分からない。結局、また保育の仕事を探す。そんな感覚です。でも本当に、そうなのでしょうか。 保育士の経験は、保育園の中だけのものなのか 保育士は日々、多くのことをしています。 子どもの様子を観察する。 保護者に伝わる文章を書く。 相手の話を聞く。 複数の仕事を同時に進める。 急なトラブルに対応する。 行事を企画する。 人間関係を調整する。 これらは、保育園の外でも使えるスキルです。 今回の方も、すでにライティングという形で、自分の経験を別の場所に持ち出し始めています。保育園で働き続けることだけが、「保育士の経験を生かす」方法ではないのかもしれません。一度外に出ることで、また違う形で保育とつながることもできます。 身だしなみや生活まで含めて、働き方を選びたい 本人の話の中では、「身だしなみやプライベートも充実させながら働きたい」という思いも出てきました。これも、一見すると保育とは関係ない話に見えます。でも、長く働くことを考えるなら重要です。どんな服装で働きたいのか。どんな髪型をしたいのか。家族とどんな時間を過ごしたいのか。自宅で働きたいのか。子どもが小さい間だけ働き方を変えたいのか。 人生には、仕事以外にもたくさんの要素があります。「保育士なのだからこうあるべき」という型に、人の人生を合わせ続けるのは難しいでしょう。 人手不足を「本人の覚悟」の問題にしない 今回の話で、一番考えさせられたのは、やはり時短勤務の話でした。園側からすれば、「みんな時短になったら現場が回らない」という心配があります。それ自体は理解できます。でも、だからといって、「フルタイムで働けないなら辞めてもらうしかない」となれば、経験を積んだ保育士ほど、出産や子育てをきっかけに現場から離れていきます。そしてまた、「保育士が足りない」という話になります。これは個人の覚悟の問題ではなく、仕組みの問題なのだと思います。時短の人がいても回る配置。産休や育休が重なっても回る体制。働き方が変わっても経験を生かせる役割。そういう選択肢を作らなければ、「子どもを産んでも働き続けてください」とは言えません。 子育てを支える場所だからこそ 今回のインタビューを聞きながら、何度も頭に浮かんだことがあります。保育園・幼稚園・子ども園は、子どもの育ちを支え、子育てをする家庭を支える場所です。それなら、そこで働く人が親になったときにも、「子育てしながら働ける場所」であってほしい。 もちろん、簡単ではありません。保育には最低限必要な人数があります。朝も夕方も子どもがいます。保護者が仕事をしている時間に園を閉めるわけにもいきません。 だからこそ、個人の頑張りではなく、仕組みが必要です。そしてAIやデジタル化も、本来はそのために使うものなのかもしれません。連絡帳を早く書く。書類を短時間で作る。確認作業を減らす。そうして生まれた時間を、「時短勤務の人がいても回る余裕」につなげることはできないか。 今回の話を聞いて、AI活用について考えていたはずが、最後にはもっと大きな問いに戻ってきました。「保育士が、自分自身の生活や子育ても大切にしながら働き続けられる現場とは、どんな場所なのか」保育の仕事が好きなのに、働き方を理由に離れる人を減らすために何ができるのか。 「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で、引き続き現場の声を聞きながら考えていきたいと思います。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー vo5. 〜便利な仕組みがあっても、使えるとは限らない。小規模園の施設長に聞いた、ICT・AI活用の現実〜
「便利なサービスがあるなら、導入すればいい」と思ってしまうことがあります。連絡帳をアプリにする。出欠確認をデジタル化する。週案や年間計画をパソコンで作る。AIを使って文章作成を助けてもらう。技術だけを見れば、できることはかなり増えています。 でも、実際の現場では、「便利なのは分かっている。でも、使えない」という状況もあります。 今回の「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」でお話を聞いたのは、神奈川県の小規模な認可外保育園で施設長を務めていた方です。現在は産休・育休中で、育休後は復職を予定しています。現場ではコドモンを使い、保護者連絡や写真販売など、一部の業務はデジタル化されています。一方で、週案、年間計画、出席簿などは、今も手書きです。 なぜ、便利なシステムがあるのに、すべてデジタル化できないのでしょうか。話を聞いていくと、ツールの問題だけではない、園の規模や予算、行政ルールの壁が見えてきました。 コドモンは使っている。でも、全部ではない 現在の園では、コドモンを使っています。 保護者からの連絡。写真販売。日々の様子の共有。身体測定の記録。こうした業務では、すでにデジタル化が進んでいます。ただし、使っているのは基本的に無料の範囲です。有料オプションを追加すれば、もっと便利になる機能もあります。でも、小規模な認可外園では、簡単に費用を増やせません。 ここは、かなり現実的な問題です。「便利だから入れる」だけでは決められません。園児数が多い大規模園と、小規模園では、一つのシステムに払える金額も違います。だからこそ、「必要なのは分かっているけれど、予算的に難しい」ということが起きます。 出欠連絡はデジタル。でも、出席簿は手書き 今回、特に印象に残ったのが出席管理の話です。保護者からの欠席連絡は、アプリで届きます。ここまではデジタルです。でも、その情報が月ごとの出席簿としてそのまま残るわけではありません。そのため、毎月あらためて紙の出席簿を作り、「今日は出席」「今日は欠席」と手書きで丸をつけています。 情報はすでにデジタルで存在しています。それでも、最後は紙に転記する。ここには、かなりの二度手間があります。こういう話を聞くと、「デジタル化しているか、していないか」という二択では現場を捉えられないと思います。 一部だけデジタルになっていても、最後に紙が残れば、作業は残ります。本当に業務負担を減らすには、業務全体の流れを見なければいけないのでしょう。 週案に30分。それが休憩時間から消えていく 週案も手書きです。本やインターネットで文章を探しながら、一から作っています。作成にかかる時間は、30分ほど。数字だけを見ると、「30分なら、それほど大きくないのでは」と思うかもしれません。 でも、その30分をどこから出しているかが問題です。 午睡後の休憩時間は約1時間。その時間の中で、制作物の準備などもします。 つまり、週案に30分使えば、休憩時間の半分が消えます。本来休むための時間に、書類を書く。しかも、毎週です。一回あたりの時間は小さく見えても、積み重なるとかなり大きな負担になります。 「毎日同じところは省略したい」でも、監査で認められない 週案には、毎日ほとんど変わらない内容があります。登園。食事。午睡。基本的な一日の流れです。 本人としては、「変わらない部分は固定化して、主活動のところだけ書きたい」と考えています。園庭がないため、公園遊びなど、その日の活動部分だけを追記する。それなら、書く量はかなり減ります。 ところが、自治体の監査では認められないと言われたそうです。ここも、現場側だけでは変えられない問題です。先生たちが、「この書類はもっと簡略化できる」と思っていても、行政側の基準が変わらなければ、そのまま続けなければいけません。本人は、東京都では比較的簡略化されていると聞く一方で、神奈川県は監査が厳しい印象を持っていると話していました。同じ保育の仕事でも、自治体によって求められる書類が違う。これは、かなり興味深い話です。 「効率化したい」と思っても、園だけでは決められない 保育現場の業務改善を考えるとき、どうしても園側に目が向きます。園長が決めればいい。法人が導入すればいい。現場が新しいものを使えばいい。でも、実際にはそれだけではありません。予算があります。行政のルールがあります。監査があります。情報管理の問題もあります。園側が、「もっと効率化したい」と思っていても、変えられない仕事があります。 今回の話を聞いて、「なぜまだ手書きなのか」と外から簡単に言うのは危険だと改めて感じました。そこには、現場なりの理由があります。 制作物も、毎月新しく考えている 負担になっているのは、書類だけではありません。制作物もすべて手作りです。最近は本よりも、InstagramやTikTokを参考にすることが多いそうです。 0〜2歳児なら、型紙を準備する。折り紙をちぎって貼れるようにする。3〜5歳児なら、切る、折るところからできるよう、年齢に合わせて準備する。 毎月、新しい制作を考えています。前年と同じものを使えば、時間は減らせます。でも、それもしづらい理由があります。兄弟児がいる家庭から、「また同じ制作だ」と思われるかもしれない。 毎月きちんと工夫していることも伝えたい。そして、子どもの年齢や発達に合わせたい。だから、新しく考えています。ここにも、「効率化だけでは割り切れない仕事」があります。 保育では、ただ同じものを繰り返せばいいわけではありません。子どもの成長を見る仕事だからこそ、毎年変える意味もあります。 幼稚園では、32人を一人で見ていた この方は、以前は幼稚園で働いていました。当時は、一人で32人のクラスを担当していたそうです。制作物の準備。書類。行事。残業。仕事量は、今の保育園より圧倒的に多かったと話しています。 幼稚園から保育園へ転職した理由の一つも、働き方でした。結婚と引っ越しをきっかけに、「今のままの働き方を続けられるのか」と考えました。将来自分に子どもができたとき、運動会や発表会に追われる働き方を続けるのは難しい。そして、自分自身が0〜1歳児保育を経験しておきたい。そんな思いもあり、条件の良かった神奈川県の保育園へ転職しました。 楽になった。でも、幼稚園のほうが楽しかった部分もある 実際に保育園へ移ると、残業は減りました。一方で、複数担任ならではの難しさもあります。自分一人で決められない。ほかの先生と考え方を調整しなければいけない。 幼稚園では、自分のクラスを持ち、運動会や発表会などの行事を通して、「子どもたちがここまで成長した」と感じられる楽しさがありました。 本人は、「幼稚園のほうが楽しかったと思う部分もある」と話しています。ここも面白いところです。仕事が楽になれば、それだけで満足度が上がるわけではありません。大変だったからこそ得られたやりがいもある。この両方があるのだと思います。 施設長になっても、子どものすぐそばにいる 現在の園は小規模です。施設長のデスクも、子どもたちがいるフロアの中にあります。そのため、施設長になっても、「事務だけをする人」にはなりません。子どもの対応に入る。先生をフォローする。その合間に事務作業をする。小規模園ならではの距離の近さがあります。 本人は、施設長になってからも子どもと密に関われる環境にいました。そして現在は産休・育休中です。施設長という立場で産休・育休を取得し、復職する予定です。これも一つの「続けられる働き方」だと思います。 役職があるから休めない。管理職だから出産したら辞める。そうではなく、引き継いで、また戻る。こうした働き方が普通になれば、保育業界で長く働ける人も増えるのかもしれません。 ChatGPTは、すでに日常の相談相手 AIについて聞くと、ChatGPTを日常的に使っていました。分からないことを聞く。疑問を調べる。相談する。ほぼ毎日のように使っているそうです。 本人は、「親身に寄り添ってくれて心強い」と感じています。一方で、「全部信じていいのか分からない」という不安も持っています。この感覚は、かなり自然だと思います。 AIは便利です。でも、正しいとは限りません。特に保育では、子どもや保護者に関する情報を扱います。だからこそ、「便利だから使う」だけではなく、「どこまで使うか」を考える必要があります。 復職したら、文章作成にAIを使いたい 現場にいたころは、まだ仕事でAIを使っていませんでした。でも、復職後は使ってみたいと話しています。連絡帳。お便り。誤字のチェック。文章の修正。 特に負担を感じていたのが、「毎日似たような公園遊びを、違う文章で伝えること」でした。やっていることは似ています。でも、保護者に送る文章を毎日まったく同じにはできません。 そこで、「文章のバリエーションを出してほしい」というニーズがあります。AIが文章を一から考えるというより、「言い換えを手伝ってもらう」という使い方です。これは、かなり現実的なAI活用だと思います。 AIがあれば、週案の30分はなくせるかもしれない 今回、開発中の保育専用AIについても見てもらいました。 LINE上で使い、選択肢を選ぶだけで、週案。お便り。画像。こうしたものを生成できる仕組みです。本人は、かなり前向きな反応でした。毎週30分かけていた週案。毎日の連絡帳。文章を考える時間。ここを短くできれば、現場にとっては助かります。 ただ、今回の話を聞いていると、「AIさえ入れれば解決する」とは思えません。週案をAIで作れても、行政が認めなければ使えないかもしれません。便利な機能があっても、予算がなければ契約できないかもしれません。AIを使いたくても、園としてルールがなければ難しいこともあります。技術だけでは、現場は変わりません。 「使える技術」と「使える環境」は別物 今回のインタビューを聞いて、改めて感じたのがここです。今は、便利な技術がたくさんあります。出席管理を自動化できます。週案も作れます。連絡帳も文章を考えてもらえます。制作物のアイデアもAIに相談できます。 でも、「できること」と「現場で使えること」は違います。費用。園の規模。自治体のルール。監査。個人情報。職員の使い方。こうした条件がそろわなければ、便利な技術があっても使えません。 だから、保育現場のDXを考えるなら、「便利なサービスを作る」だけでは足りないのでしょう。小さな園でも使える価格なのか。行政書類として認められるのか。現場の先生が無理なく使えるのか。そこまで考えて、初めて現場に届くのだと思います。 今回の話から、「便利な技術をどう作るか」ではなく、「便利な技術を、どうすれば現場で本当に使えるのか」という新しい問いが見えてきました。 引き続き、「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で、現場の声を聞いていきたいと思います。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー vo4. 〜働きやすい園だった。それでも、わが子の入学式に出られないかもしれない働き方は続けられなかった〜
「働きやすい職場なら、長く働き続けられる」私は、どこかでそんなふうに考えていました。人間関係が悪くない。職場の雰囲気もいい。デジタル化も少しずつ導入され、以前より仕事も楽になっている。それなら、辞める理由は少なくなるはずです。 でも、今回の「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で話を聞いて、その考えは少し変わりました。今回お話を聞いたのは、保育士として12年間働き、今年3月に退職した方です。 本人は、勤めていた園について、「働きやすいし、良い意味で緩い」と話していました。辞める人も少なく、結婚や引っ越し、定年などを除けば、長く働く人が多い職場だったそうです。それでも本人は辞めました。きっかけは、上のお子さんが小学校に入学することでした。 入学式に出られないかもしれない この方は、それまでフルタイムで働いていました。早番の日は朝6時45分に家を出る。遅番の日は、仕事が終わるのが19時を過ぎることもある。そんな働き方を続けていました。そして職場には、暗黙のルールがありました。「1日に休めるのは2人まで」というものです。 入学式でも卒業式でも、そのルールは変わりません。同じ年齢の子どもを持つ職員が3人いれば、誰か一人は休めない可能性があります。 本人は、「私は全部に出たかった」と話していました。だから、上のお子さんが小学校に入学するタイミングで、働き方を見直すことにしました。職場が嫌いだったわけではありません。人間関係が決定的に悪かったわけでもない。それでも、「子どもの節目に立ち会える働き方をしたい」という気持ちのほうが大きくなったのです。 「良い職場」と「自分に合う働き方」は同じではない 保育士の離職について考えるとき、 給与。人間関係。残業。持ち帰り仕事。 こうした分かりやすい問題に目が向きます。もちろん、どれも大切です。でも、今回の話は少し違いました。職場としては、本人自身が「いい職場」と感じている。それでも、家庭の状況が変われば、続けられなくなることがあります。特に保育士は、ほかの家庭の子どもを預かる仕事です。保護者が働いている時間に園を開けなければいけません。そのため、早番や遅番があります。学校行事がある日だからといって、職員全員が簡単に休めるわけでもありません。それは保育という仕事の構造上、簡単には変えられない部分もあるでしょう。 ただ、「保育士自身も、自分の子どもの親である」という当たり前のことを、改めて考えさせられました。 12年間のうちに、連絡帳は大きく変わった 一方で、働いていた12年間の中で、仕事のやり方はかなり変わっています。 この園では、勤務3年目ごろから「キッズリー」というアプリを導入しました。 欠席連絡。保護者からの連絡。けがなどのちょっとした報告。おむつがなくなりそうだという連絡。写真付きの園での様子。 こうしたやり取りが、少しずつアプリに移っていきました。導入当初は、戸惑いもあったそうです。年配の先生から、「次はどこを押すの」「文章がこんなふうになったけれど、どうしたらいいの」と聞かれる。 若い先生が自分の仕事をしながら、使い方を教えることもありました。それでも、この園では、「またやってるね」と笑いながら助け合える雰囲気があったそうです。本人は、「導入されて良かったという気持ちのほうが大きかった」と話していました。 25人分の連絡帳が、2〜3時間から1時間未満に ICT導入の効果が最も分かりやすかったのが、連絡帳です。多いときには、一人で25人ほどの子どもを見ていたそうです。手書きで25人分の連絡帳を書く。一人ずつその日の様子を思い出しながら、文章を考える。本人によると、それだけで2〜3時間ほどかかることがありました。 行事のあった日などは、家に持ち帰って書き、翌日に渡せるようにすることもあったそうです。それがアプリになってからは、「1時間もしないで終わった」といいます。文章をコピーできます。文字を打つほうが、手書きより早い。それだけでも、大きな違いです。AIのような新しい技術でなくても、単純に「手書きをやめる」だけで減らせる負担はまだあります。 ただ、デジタル化にも「運用」の問題があった 興味深かったのは、アプリそのものには比較的すぐ慣れた一方で、「使い方のルール」をそろえるまでには半年から1年ほどかかったという話です。 ある先生は毎週投稿する。別の先生はあまり投稿しない。一人の子どもの写真をたくさん載せる先生もいれば、クラス全体の写真が中心の先生もいる。写真の枚数にもばらつきがある。ツールを入れたからといって、すぐに園全体の運用が整うわけではありません。 何をどのくらい投稿するのか。誰が担当するのか。どこまで統一するのか。 こうしたルールを作る時間が必要でした。 ICT導入というと、「システムを契約すること」に目が向きます。でも実際には、導入後の運用をどう整えるかのほうが大変なのかもしれません。 AIは「考える代わり」ではなく、言葉に詰まったときに使った この方は、ChatGPTやGeminiも日常的に使っています。保育現場でも使った経験がありました。年度末のクラスだよりでは、一年間を振り返りながら、一人ひとりに向けた文章を書くことがあります。人数が多ければ、当然文章も増えます。 しかも、「同じ言葉ばかりにならないようにしたい」という難しさがあります。そこで、「この子はこういう特徴がある」というキーワードをAIに入れて、文章を考えてもらう。 同じ表現が続いたときには、「この言葉の別の言い方は何?」と聞く。そういう使い方をしていたそうです。全部AIに任せるというより、「自分の中にあるものを文章にする手助け」として使っています。これは、現場でのAI活用を考えるうえで分かりやすい例だと思います。 でも、AIを使っていることはあまり話さない 職場全体では、AI活用が広がっていたわけではありません。お楽しみ会で、自分の顔をAIでイラストにしてTシャツにする。そんな楽しい使い方はあったそうです。一方で、書類作成などにAIを使っているという話は、あまり共有されていませんでした。 本人の感覚では、30代以下の先生は使っている人もいる。でも、40代以上になると、「これまで自分で考えてきた」という感覚が強い人もいる。だから、若い先生もあえて口に出さない。そんな雰囲気もあったそうです。AIを使えるかどうかより、「使っていると言える職場か」という問題もあるのでしょう。 SNSをやらなかった理由は「必要がなかったから」 今回、もう一つ面白かった話があります。この園は、InstagramなどのSNS運用をしていませんでした。理由はシンプルです。「やらなくても園児が集まるから」です。 毎年、定員を超えるほど希望者がいる人気の園でした。だから、新たにSNSを運用する必要性がなかった。しかもSNSを始めれば、「誰が投稿するのか」という仕事が増えます。 事務所の先生ができないなら、若い先生に任せることになるかもしれない。本人は、それについて、「余計な仕事だと思う」と話していました。これはかなり重要だと思います。 今は、「保育園もSNSをやったほうがいい」「Instagramで園の魅力を発信したほうがいい」という話も多くあります。でも、必要がないなら、やらない。目的がない仕事を増やさない。これも立派な業務改善です。 家で働きたいと思い、Webデザインを学んだ 退職を考える中で、この方は別の準備もしていました。「家でできる仕事がしたい」と思い、オンラインのWebデザインスクールに通ったそうです。 フルタイムで保育士として働きながら、子育てもする。時間に余裕がある生活ではありません。それでも、少しずつ学んでいました。 退職後すぐに完全な在宅ワークになったわけではなく、現在は別業種でパートとして働く予定だそうです。それでも、「保育士しかできない」と決めつけず、違う働き方を探している。ここにも今回のインタビューらしさを感じました。 保育士を辞めることは、保育という仕事を否定することではありません。人生の状況に合わせて、働き方を変える。それだけのことなのかもしれません。 最後の年、年少15人を一人で見ていた インタビューの最後に、「保育業界がもっとこうなったらいい、と思うことはありますか」と聞きました。そこで出てきたのが、人員配置の話でした。 最後の年、この方は年少児15人を一人で担当していました。その中には、支援を必要とする子も一人いました。本人の説明では、配置基準上は問題ありません。ただ、その子に一人の補助職員をつけられるほどの予算はなかったそうです。同じ学年の別クラスでは、より支援が必要な子がいるため補助の先生が配置されていました。その先生たちが余裕のあるときに、自分のクラスを助けに来てくれることもありました。 そのとき本人は、「すごく楽だった」と感じたそうです。普段は、支援の必要な一人の子を追いかけながら、残り14人を見る。その子が保育室から出てしまえば、「ちょっと待っていて」とほかの14人に伝え、探しに行く。そんな状況もありました。 この話は、文字だけでも怖さがあります。先生が頑張れば何とかなる。配置基準上は問題ない。それで終わらせていいのか。考えさせられました。 ICTで2時間減らせても、一人で15人を見る現実は変わらない 今回の話では、ICTの効果がかなりはっきり出ていました。25人分の連絡帳が、2〜3時間から1時間未満になった。これは大きな変化です。AIも、文章を考える補助として使える。業務改善できる部分は、まだたくさんあると思います。 でも、それですべてが解決するわけではありません。連絡帳が早く終わっても、一人で15人を見る状況は残ります。AIが文章を作れても、子どもが保育室から出てしまったときに追いかけてくれるわけではありません。そして、仕事が効率化されても、「自分の子どもの入学式に出られるか」という働き方の問題は別に残ります。ここを混同してはいけないのだと思います。 保育士が長く働ける条件は、一つではない 今回の話を聞いて、「保育士が辞めない職場を作るには、何を改善すればいいのか」という問い自体が、少し単純すぎるのかもしれないと思いました。 ICTを入れる。AIを使う。給与を上げる。人間関係を良くする。人を増やす。休みを取りやすくする。全部必要でしょう。 でも、人によって必要なものは違います。20代と30代でも違う。独身のときと、子どもが生まれたあとでも違う。子どもが保育園に通っている時期と、小学校に上がったあとでも違います。職場が変わらなくても、働く人の人生は変わっていきます。 だから、「この園は働きやすいから大丈夫」ではなく、「その人が今も働き続けられる環境になっているか」を見続ける必要があるのでしょう。 今回お話を聞いた方は、園そのものを嫌いになって辞めたわけではありません。むしろ、いい職場だったと話していました。それでも、自分の子どもの節目に立ち会える働き方を選びました。 この話から、「保育士自身の生活を守りながら働ける保育現場とは、どんな場所なのか」という新しい問いが見えてきました。 「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で、引き続き現場の声を聞いていきたいと思います。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー vo.3 〜「もう保育士にはならない」と辞めた。それでも現場に戻りたくなった理由〜
保育士の仕事について調べると、「大変」という言葉を目にすることが多くあります。 書類が多い。人手が足りない。給与や待遇の問題がある。人間関係が難しい。そして近年は、不適切保育や虐待などのニュースも目立つようになりました。 もちろん、こうした課題から目を背けるべきではありません。でも、それだけで保育という仕事を語っていいのでしょうか。 今回の「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」でお話を聞いたのは、保育士として約10年間働き、主任も経験した方です。現在は現場を離れ、大学で保育士を目指す学生たちと関わる仕事をしています。 退職するときには、「もう絶対に次は保育士にはならない」と思っていたそうです。ところが、現場を離れてみると、また戻りたくなったといいます。なぜなのでしょうか。 話を聞いていくと、保育の大変さと、それでもこの仕事を好きになる理由の両方が見えてきました。 「もう一回、区切りをつけよう」と思った 保育士として約10年働き、主任も経験しました。退職するとき、次の仕事を決めていたわけではありません。10年働いたことを一つの区切りとして、いったん現場を離れようと考えたそうです。 いろいろなことを経験し、後輩たちに任せてもいいと思えるようになった。本人の中では、一度やり切ったという感覚もあったようです。だから退職するときは、「もう絶対に次は保育士にはならない」と思っていました。 まずはゆっくりしよう。次は違う仕事をしてみよう。そんな気持ちで現場を離れました。でも、離れてみると気持ちが変わりました。「やっぱり、離れれば現場に戻りたくて」自分でも、「やっぱり好きみたいです」と話していました。 一度は「もうやらない」と思った仕事に、なぜ戻りたくなるのか。この話が、今回のインタビューで強く印象に残りました。 現場では、仕事を減らすための工夫もしてきた もちろん、保育士時代が楽だったわけではありません。勤務していたのは、50年以上続く公設民営の保育園でした。市のルールもあり、デジタル化は簡単には進みませんでした。午睡チェックも、お帳面も手書きでした。パソコンも各クラスに1台あるわけではありません。デジタル化しようとしても、パソコンを使うために事務所まで行かなければならず、場合によっては職員同士でパソコンを使うタイミングが重なります。 そのため、「それなら部屋の隅でさっと書ける手書きのほうがいい」という先生がいるのも自然なことでした。そこで、パソコンでも手書きでも、好きな方法を選べるようにしました。一見すると柔軟な方法です。ところが、主任だった本人には別の負担が生まれます。紙で提出されたものを、最終的にデータ化する必要があったのです。「データでもらっていたら、コピーして使えたのに」と思いながら、自分で入力していたそうです。便利にするための仕組みが、別の人の仕事を増やしてしまう。 デジタル化を考えるときには、こういう現実も見なければいけないのでしょう。 残業を減らしたのは、新しいシステムだけではなかった 興味深かったのは、働いていた10年の間に、残業がかなり減ったという話です。新人のころは、残業するのが当たり前でした。ところが、少しずつ働き方が変わり、退職するころには残業はほとんどなくなっていたそうです。 では、何が変わったのでしょうか。 人員が増え、休憩を取ったり、その時間を使って事務作業を進めたりできるようになったこともあります。それ以上に印象的だったのが、「そもそも書くものを減らした」という話でした。 月案にも書いてある。別の書類にも同じようなことを書いている。それなら、一つにまとめてもいいのではないか。「重なっているところがあるよね」「ここはもういらないのではないか」そんな話を園の先生たちとしながら、項目そのものを減らしていったそうです。 業務改善というと、AIや新しいシステムを導入する話になりがちです。でも、その前に、「この仕事は本当に必要なのか」を考える。それだけでも、現場は変えられるのだと思います。 AIを使えば楽になる。でも、それだけでは足りない 現在、この方は大学で保育士を目指す学生たちと接しています。そこで新しく出てきたのが、AIの問題です。学生たちにとってChatGPTは、すでに身近な存在になっています。 レポートを見て、「これは本当に本人が書いたのかな」と思うこともあるそうです。大学の先生たちの考え方もさまざまです。内容を理解したうえで、自分の言葉に書き換えればいい。自分で説明できるならいい。そのまま使うこと自体は止めないものの、それでは本人の身にならないと考える先生もいる。完全に禁止するのではなく、どう使うかを考えている段階だといいます。 本人もAIを否定していません。むしろ、「使いこなせば保育士の負担は減る」と考えています。ただし、条件があります。「子ども一人ひとりをちゃんと見たうえでAIを使うこと」です。 新人時代は、本の文章をそのまま使って怒られた この話を聞いていて印象に残ったのが、本人の新人時代の経験です。新人のころ、カリキュラムをどう書けばいいのか分からなかった。そこで保育の本をたくさん買い、「本から全部丸パクリするぐらい」参考にしていたそうです。 すると先輩から、「自分のクラスの子どもの実態と合っていない」と指摘されました。本人としては、「でも、書けないから……」という状態です。そこから先輩に教えてもらいながら、少しずつ書けるようになりました。 この経験は、今のAIにも近いように思います。昔は本でした。その後、インターネットやInstagram、YouTubeが使われるようになりました。そして今はAIがあります。 道具は変わっても、「参考にしたものを、そのまま目の前の子どもに当てはめていいのか」という問題は変わっていません。AIだから考えなくなるのではなく、どう考えながら使うかを教える必要があるのでしょう。 本人も、「正しく、自分で理解を持って、責任が取れる使い方をしていく」という考えを話していました。園としてルールやマニュアルを作り、AIの使い方を共有することも必要ではないかといいます。 AIを禁止するのでもない。AIに全部任せるのでもない。この間をどう作っていくのか。これから保育士になる学生たちと接しているからこそ、感じている課題なのだと思います。 今は「保育士になる前」の学生を見ている 現場を離れた現在、本人の視点にも変化がありました。実習前の学生と接すると、「自分もこういう気持ちだったんだな」と気づくそうです。学生からは、「実習がしんどかった」「実習記録が大変だった」という声も聞きます。 実際の保育現場を見て、「自分は保育士になりたくない」と感じてしまう学生もいます。一方で、本人が現在働いている養成校でも、学生数が減っていることを実感しているそうです。本人が学生だったころと比べても、大きく減っています。ただでさえ保育士不足が課題になっている中で、目指す人まで減っていく。 だから今は、「この子たちが、いかに保育士や幼児教育の道に期待を持って進んでくれるか」を考えるようになったといいます。現場にいたころとは、まったく違う視点です。 「保育は大変」だけでは、次の人が来なくなる インタビューの最後に、「保育業界がもっと良くなるために、何が必要だと思いますか」と聞きました。そこで出てきたのが、「保育の魅力をもっと伝えたい」という話でした。 SNSやニュースでは、不適切保育や虐待などが大きく取り上げられます。もちろん、それらを隠すべきではありません。ただ、それだけを見ていると、「保育士は大変そう」「怖い仕事なのではないか」という印象ばかりが強くなります。一方で、園のInstagramを見ると、職員のルーティンやエプロン紹介などが発信されている。本人は、そこにも少し違和感があると話していました。保育士を目指す学生が本当に知りたいのは、それだけではないのではないか。 子どもと関わること。保護者と関わること。職員同士で関わること。対人援助の仕事だから、大変なことはたくさんある。でも、その分だけ、この仕事でしか得られないものもある。そこをもっと伝えられないか。 そんな話でした。 「先生!」と戻ってきてくれる では、本人にとって、保育士の何がそんなに良かったのでしょうか。最後に聞いてみました。 卒園した子どもたちが、園に帰ってきてくれる。自分の顔を見て、「先生!」と呼んでくれる。その子たちの卒業を見届けられる。中には、「先生になりたい」と言って戻ってきてくれる子もいる。そして毎朝、自分の顔を見た子どもが、「おはよう」と言ってくれる。それだけで、「今日も頑張ろう」と思えたそうです。 本人は、それを「人とのつながり」と表現していました。保育は、対人援助の仕事です。だからこそ、人との関係に悩むこともあるでしょう。書類もあります。業務も多いです。改善しなければいけないことも、まだたくさんあります。それでも、人と関わる仕事だからこそ生まれる喜びもあります。 「大変さをなくすこと」と「魅力を伝えること」の両方が必要なのかもしれない 今回の話を聞くまで、保育業界を良くすることを考えるとき、どうしても「負担をどう減らすか」に意識が向いていました。 書類を減らす。デジタル化する。AIを使う。残業を減らす。 もちろん、どれも必要でしょう。 でも、それだけでは「保育士になりたい人を増やす」という問題までは解決できないのかもしれません。仕事の大変さを減らすこと。そして、その仕事にしかない魅力を伝えること。両方が必要です。 「もう絶対に保育士にはならない」そう思って現場を離れた人が、離れてみたらまた戻りたくなった。そこには、効率化だけでは説明できない何かがあります。子どもから「先生」と呼ばれること。卒園した子が戻ってきてくれること。その子が大きくなって、「先生になりたい」と言ってくれること。 こういう話は、業務負担や待遇の数字だけを見ていても出てきません。保育の課題をきちんと改善しながら、保育の魅力もきちんと伝える。 では、その魅力をこれから保育士を目指す人たちに、どう届けていけばいいのでしょうか。「保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビュー」で現場の声を聞きながら、引き続き考えていきたいと思います。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・子ども園の現場 100人インタビュー vo.2 〜手書き書類はほぼゼロ。それでも仕事は増えていく? 現役保育士に聞いた「デジタル化のその先」〜
保育園・幼稚園・子ども園の現場をデジタル化すれば、先生たちは楽になる。私自身、そう考えてきました。紙の書類をなくす。電話連絡を減らす。過去の計画をコピーして使えるようにする。こうした仕組みが入れば、業務時間はかなり短くできるはずです。 今回お話を聞いたのは、2つの法人で勤務経験を持つ現役の男性保育士の方です。現在の園では、年間指導計画や月案、保護者との連絡、欠席連絡など、多くの業務がデジタル化されています。 本人の言葉では、「もう手書きの書類は正直ほぼない」という状態です。前に働いていた園と比べても、書類の負担はかなり減ったそうです。ここまで聞くと、「やはりデジタル化を進めればいい」という話に見えます。 でも、話を聞いていくうちに、少し違う問題が見えてきました。業務が効率化されても、新しい仕事が増えていく。そしてAIを入れれば、必ず保育の質が上がるわけでもない。 今回のインタビューから考えたいのは、「仕事を楽にすること」と「本当に大事な仕事に時間を使うこと」は同じなのか。ということについてです。 今の園では、手書きも電話もほとんどない 現在の園では、「コミュナビ」というシステムを使っています。 年間指導計画 月案 保護者との連絡 欠席連絡 こうした業務の多くがシステム上で完結しています。電話連絡もほとんどありません。前の職場では、デジタル化は進み始めていたものの、まだ手書きとデジタルを行ったり来たりしていたそうです。 指導計画をパソコンで作っても、「添削するなら手書きのほうが分かりやすい」という意見が出て、紙に戻ることもあったといいます。 たしかに、紙に赤字で書けば、「ここをこう直して」と伝えやすいです。 一方、デジタルだと、「どこに修正を書けばいいのか分からない」という問題もあります。これは、デジタルにすればすべて解決するわけではない、分かりやすい例だと思います。 現在の園では、大きな修正がそもそも少なく、必要なら口頭で伝えることで補っています。システムだけではなく、人同士のコミュニケーションでうまく埋めているわけです。 「こんなに少なくなるんだ」と感じた 今の園に転職してから、この方は書類作成の負担がかなり減ったと感じています。もともと文章を書くのが得意ではなく、白紙から一から文章を作ることに負担を感じるタイプだったそうです。 でも、過去の文章を参考にしたり、コピーして一部を変えたりできれば、かなり楽になります。 本人は前職について、「負担が大きいと感じて辞めた部分もあった」と話していました。そして現在の環境を経験して、「こんなに少なくなるんだ、時短になるんだ」と感じたそうです。これはかなり大きな話だと思います。 書類の作り方やシステムの違いだけで、同じ保育士という仕事でも負担感が大きく変わる。しかも本人は、転職前にはここまでデジタル化されているとは知らなかったそうです。 園見学のときにシステムの説明は受けていました。でも、実際に働いて初めて、「ここまで違うのか」と分かった。働く人にとって、どんなデジタル環境があるのかは、給与や休日と同じくらい重要な情報になっていくのかもしれません。 AIも使う。でも「AIありき」は違う この方は、AIにもかなり詳しいです。ChatGPTの有料版を使い、Gemini、NotebookLM、Sunoなども触っています。副業でライターの仕事もしていて、記事制作のリサーチや下書きにもAIを使っています。 さらに本業でも、「勤務表をAIで作れないか」と模索しているそうです。主任や管理職が時間をかけて作っているシフト表を、AIで少しでも楽にできないか。これは、かなり現実的な使い方だと思います。 ただ、AIを保育に入れることについては、かなり慎重な考えも持っていました。保育に特化したAIがあれば使いたい。でも、「AIありきでできるかというと、違う」と話しています。 理由は、新人の先生です。 新人がAIを使うと、保育の質が落ちるかもしれない この話は、かなり印象に残りました。 子どもの姿を見る その姿から何が必要かを考える それを文章に落とす そして、先輩に見てもらって直す こうした経験を重ねながら、先生は少しずつ育っていきます。もし1年目や2年目の先生がAIを使って、「それっぽい文章が出た」「読んだけれど、まあ大丈夫そう」で終わってしまったらどうなるか。 本人は、「保育の質が逆に落ちるのではないか」と心配していました。これは、AI導入を考えるうえで避けてはいけない問題です。文章として自然だから、内容も正しいとは限りません。AIは、「正解っぽいもの」を出すのが非常に得意です。 でも、目の前の子どもを知っているわけではありません。その子に本当に合っているのか。今のクラスの状態に合っているのか。最後に判断するのは先生です。 その判断力がまだ育っていない段階でAIに頼りすぎれば、たしかに危険でしょう。 ただ、新人は昔から「真似」をしてきた 一方で、話していて別の視点も出てきました。 新人の先生は、これまでも完全にゼロから文章を書いていたわけではありません。 先輩の文章を参考にする。本を買う。インターネットで例文を探す。似た表現を持ってきて、自分の文章にする。 本人自身も、新人のころは先輩の文章や本を参考にしていたそうです。時には文章をほとんどそのまま使って怒られ、「この書き方は違うんだ」と教えてもらいながら覚えていったと話していました。そう考えると、AIは「ものすごく性能の高いテンプレート」と見ることもできます。 問題は、AIを使うことそのものではありません。出てきた文章を、「なぜこう書くのか」「本当に目の前の子どもに合っているのか」と考える仕組みを残せるかどうかです。 AIが新人教育を壊すのか。それとも、新人教育の教材として使えるのか。ここは、ツールの設計だけではなく、園側の使い方にも左右されそうです。 デジタル化したのに、新しい仕事も増えている そして、今回もう一つ気になったのがInstagramの話です。この園では、クラスごとに担当を決めてInstagramを運用しています。子どもたちの活動を撮影し、写真や動画を編集して投稿しています。さらに、園内では月1回ドキュメンテーションも作っています。 ここで本人が話していたのが、「何のためにInstagramをやっているのか、もう少し明確にしたほうがいい」ということでした。 在園している保護者に日常を見せるためなのか 園児募集のためなのか 採用のためなのか 目的がはっきりしないまま、「今はInstagramも必要だから」と業務だけ増えてしまえば、せっかくデジタル化で減らした負担が別のところで戻ってきます。これは、デジタル化を考えるうえでかなり重要な話だと思います。 効率化すると「空いた時間」に新しい仕事が入ってくる 技術によって仕事を10減らしたとします。すると、その10が全部「余裕」になるとは限りません。 ・Instagramを始める・動画を編集する・園児募集のイベントを増やす・保育の質を高めるために新しい記録を始める・新しい研修をする 気づけば、減らした仕事の代わりに別の仕事が入ってきます。私自身、AIについて話していると、「AIで効率化したら先生が楽になる」と考えがちです。 でも、効率化したあとに何をするかまで考えなければ、本当の意味で先生の負担は減らないのかもしれません。本人も、「そもそも何のためにしているのかを考えて、増やすべきものと減らすべきものを話し合えたらいい」と話していました。 この言葉は、かなり本質的だと思います。 空いた時間を「もっと子どもを見る時間」にできるか もう一つ面白かったのが、自己投資について聞いたときの回答です。 この方は、モンテッソーリ教育の本や保育雑誌、傾聴やコミュニケーションの本などを買って学んでいます。一方で、セミナーなどにはあまり参加していません。なぜか。忙しいからです。 ただ、現在は業務負担が以前より減っています。では、その空いた時間に大量の研修を受けているかというと、そうでもありません。 本人は、「今までできていなかったから、もうちょっと子どもの姿を見て、必要なものは何かを考える時間に使っている」と話していました。 これは、かなり大事だと思いました。効率化によって生まれた時間を、さらに別の業務で埋める必要はありません。 子どもを見る。考える。少し余裕を持つ。それ自体に価値があります。「空いた時間=生産性が足りない」と考えてしまうと、永遠に仕事は減りません。 AIを入れる前に、「何のための仕事か」を問い直す 今回のインタビューでは、AI活用についてたくさん話しました。 指導案 シフト表 ライティング 保育特化AI どれも可能性があります。でも、最後に一番残ったのは、「何のためにやっているのか」という問いでした。指導案は何のために書くのか。Instagramは何のために更新するのか。ドキュメンテーションは何のために作るのか。AIを何のために入れるのか。 ここが曖昧なままだと、どれだけ便利なツールを導入しても、業務は減らないでしょう。むしろ、新しいツールが新しい仕事を生み出すことすらあります。 だから、AI導入より前に、「これは本当に必要な仕事なのか」「この仕事によって、誰にどんな良い変化を起こしたいのか」を考えたほうがいいのだと思います。 余裕があることも、保育の質なのかもしれない インタビューの最後には、保護者についての話も出ました。 本人は、「保護者にも、もっと自分の子どもに向き合う余裕があるといい」と話していました。 物価が上がる。仕事が忙しい。生活に余裕がない。そのストレスが、家庭にも園にも影響しているのではないか。先生だけではなく、保護者にも余裕がない。それが巡り巡って、子どもにも影響する。そう考えると、「余裕」は単なるぜいたくではないのかもしれません。 先生が少し落ち着いて子どもを見る。保護者が少しゆっくり子どもの話を聞く。そのために、減らせる仕事を減らす。 今回の話を聞いて、デジタル化やAIの目的は、作業時間を短くすることだけではないと思いました。人に「余裕」を返すこと。そして、その余裕を子どもに向けられるようにすること。そこまでできて、初めて業務効率化が保育の質につながるのでしょう。 AIを導入するか。デジタル化を進めるか。 その前に、「何のための仕事なのか」を一つずつ問い直す。今回のインタビューから、また一つ大きな問いをもらいました。引き続き、現場の声を聞いていきます。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園・幼稚園・認定こども園の現場 100人インタビュー vo.1 〜元公立保育園の保育士に聞いた、本当に時間を使いたい仕事〜
保育現場でAIを使うと聞くと、少し不安になる人もいると思います。 「本当に必要なのはAIなのでしょうか?」 私自身、保育園・幼稚園・子ども園の現場100人インタビューを続けながら、「AIは現場のどこまで入っていいのだろう」と考えています。 このインタビューは、AIを保育現場に広めるために行っているものではありません。先生たちが実際に何に困り、何を大切にして働いているのか。その声を聞いたうえで、本当に必要な仕組みを考えるための企画です。 今回のお話を聞いたのは、2024年まで公立保育園で働いていた元保育士の方です。現在は保育現場を離れ、AIを使いながらLP制作やコーディング、画像制作などを独学で学び、在宅で仕事をしています。 話を聞く前は、公立保育園のデジタル化やAI活用について聞くつもりでした。でも、最後に残ったのはもっと根本的な問いでした。「保育士は、本当は何に時間を使う仕事なのか」という問いです。 児童票も、要録も、連絡帳も、週案も手書きだった 先生が働いていた公立保育園では、かなり多くの書類が手書きだったそうです。 児童票 小学校に提出する要録 連絡帳 週案 日案 年間計画や月案 退職する少し前になって、ようやく月案や年間計画をパソコンで作れるようになったといいます。それ以外でパソコンを使うのは、お便りや会議の議事録くらいでした。当然、仕事にはかなり時間がかかります。 しかも、公務員なので、本来は個人情報を含む書類を家に持ち帰ってはいけません。それでも仕事は終わりません。そのため、実際には持ち帰って仕事をすることもあったそうです。ルールでは禁止されている。でも、時間内には終わらない。この矛盾を、現場側が抱え込んでいました。 パソコンになっただけで「やったー」と思った 月案などをパソコンで作れるようになったとき、現場の反応はどうだったのか聞いてみました。 返ってきたのは、「やったーですよ。やったー、やったー」という言葉でした。理由はシンプルです。前年度のデータをコピーできるからです。 歌や活動内容など、その年の子どもたちに合わせて変える部分だけを書き直せばいい。一から全部手書きする必要がなくなりました。それだけでも、かなり負担が減ったそうです。 一方で、こんな話もありました。 先生たちが時間をかけて一生懸命作った計画書でも、監査では短時間で確認されて終わることがある。もちろん、監査のためだけに書類を作っているわけではありません。 ただ、現場の負担感として、「ここまで時間をかけて作る必要があるのだろうか」と感じる場面があったことは伝わってきました。 「保育士しかできない」と思っていた ご本人自身、保育士時代はパソコンが得意だったわけではありません。むしろ、自分も苦手な側だったと話しています。ところが退職後、在宅で働こうとしたときに、パソコンを使えないことが大きな壁になりました。 そこで、独学で学び始めました。分からないことはAIに聞く。LPの作り方も、コーディングも、画像制作も、必要になるたびに調べて実際に仕事をする。そうして現在では、複数の仕事につながっています。 ご本人は、「保育士しか働けないのが嫌だった」と話していました。これは印象に残りました。 専門職として働いていると、その仕事以外のスキルを身につける時間が取りにくくなります。実際、この方も保育士として働いている間は、毎日の仕事に追われて、自分のために勉強するところまで手が回らなかったそうです。退職して初めて、新しい仕事を学ぶ余裕ができた。 そしてAIが、その学びを助けてくれました。 AIを使うなら、まず文章を整えてほしい もし今、もう一度保育現場で働くなら、AIを使いたいか。 そう聞くと、「使いたいですよね」という答えでした。特に使いたいのが、文章作成です。 保育士が書く連絡帳は、保護者の手元に残ります。そして、文章の受け取られ方によっては、「先生、こう書いてありますけど、どういう意味ですか」と確認されることもあります。内容そのものは間違っていなくても、表現が強く見えたり、意図とは違う意味で受け取られたりすることがあります。 そこで、自分が書いた文章をAIに渡して、「保護者に伝わりやすい表現にしてください」と整えてもらう。 こうした使い方には、かなり可能性を感じていました。ただし、子どもの個人情報をそのまま外部のAIサービスに入力するわけにはいきません。公立園では特に、情報管理のルールが厳しく、パソコンがオフライン環境で使われていることもあります。 AIを使えばいい。そんなに簡単な話ではありません。セキュリティや自治体側の仕組みまで整えなければ、現場だけでは進められない問題があります。 年長担任が1月から3月まで抱える「要録」 AI活用の話のなかで、特に具体的だったのが「要録」の話です。年長児の担任は、小学校に引き継ぐための書類を作成します。この作業が、とても大変だそうです。特に難しいのは、言葉の選び方です。子どもの姿を正確に伝えなければいけない。 でも、表現によっては保護者が見たときに気になる内容になるかもしれない。一人ひとりについて考えながら文章を作る必要があります。この方自身、この作業に1月から3月までかなりの時間を使うそうです。 そして、「要録が大変だから、年長担任を持ちたくない」という先生もいると話していました。 これを聞くと、AIで文章の下書きを作ることは、かなり現実的な支援に見えます。 もちろん、AIが子どもを見ているわけではありません。子どものことを知っているのは先生です。でも、先生が把握している事実や振り返りを入力し、それを適切な文章に整える部分まで、先生が一から全部やる必要があるのでしょうか。ここは分けて考えてもいいのかもしれません。 「考えること」と「文章を書くこと」は同じなのか 今回、私から開発中のAIツールについても話しました。過去の指導案などをもとに、月案・週案・日案のたたき台をAIで作る仕組みです。 ただ、開発しながら悩んでいることがあります。経験のある先生なら、AIが作った案を見て、 「このクラスには合わない」「ここは直そう」と判断できます。 でも、新人の先生の場合、「AIが出したから、これでいいのだろう」と、そのまま使ってしまう可能性があります。 それでは、先生自身が考えなくなるのではないか。そんな話をすると、この方から返ってきたのは、「考えることが正義という考え方にこだわりすぎなくていいのではないか」という意見でした。 もちろん、子どものことを考えなくていいという意味ではありません。重要なのは、何について考えるのかです。 七夕の活動をする 笹飾りを作る そのために必要な計画書の文章を、一から何時間もかけて作る。そこまで人間がやる必要があるのか。AIに案を作ってもらい、実際に保育をしてみる。うまくいかなかったら振り返る。その振り返りを次の計画に反映する。 こちらのほうが、むしろ本来の「考える仕事」に近いのかもしれません。 書類作成はAIに任せて、「動くのは人間」 今回のインタビューで、とても印象に残った言葉があります。 「書類作成はAIに任せて、動くのは人間」という考えです。 保育という仕事は、人と人が関わる仕事です。子どもの表情を見る。今日はいつもより元気がないと気づく。友達との関係を見守る。保護者の話を聞く。集団活動に入れない子がいたら、その子にどう寄り添うか考える。 こうしたことは、AIが代わりにやってくれる仕事ではありません。 一方で、週案を書く。月案を書く。要録の文章を整える。会議資料を作る。研究発表の文章をまとめる。こうした仕事の一部は、AIでも補助できるようになっています。 では、人間にしかできない仕事に、もっと時間を戻したほうがいいのではないか。今回の話を聞いて、ぼく自身の問いも少し変わりました。 「AIを使うと保育士が考えなくなるか」ではなく、「保育士には、何について考える時間を残すべきなのか」と考えたほうがいいのかもしれません。 事務や雑務が増えすぎて、子どもを見る時間が減っている インタビューの最後に、保育業界を良くするなら何を変えたいか聞きました。 そこで出てきたのが、仕事量と人間関係の話でした。 ご本人の感覚では、保育士として働いているのに、「事務や雑務に使う時間のほうが、子どもに関わる時間より多い」と感じる場面があったそうです。 保護者対応 書類 製作 行事準備 会議 ほかにもやることはたくさんあります。 その結果、本来もっと見てあげたい子どもを、十分に見られないことがあります。問題行動がある子や、けがにつながりそうな子に注意が集中し、落ち着いて活動している子を十分に認めてあげられない。そんな葛藤も話していました。 ここは、AIだけでは解決できない話でもあります。 最後に残るのは、人の問題だった さらに、この方自身が保育士を辞めた大きな理由の一つは、人間関係でした。新人や実習生に厳しく当たる職員。昔からの保育観を強く求める先輩。子どもに寄り添いたくても、「集団行動なのだから連れてきなさい」と言われる環境。 そうした職場では、若い先生が疲れて離れていってしまいます。 ご本人は、保育士資格を持ちながら医療事務など別の仕事に進んだ人も身近にいると話していました。ここはAIでは直せません。書類がすべて自動化されても、人間関係が悪ければ働き続けるのは難しいです。 むしろAIによって事務仕事が減れば、「人間にしかできない仕事とは何なのか」が、今まで以上にはっきりしてくるのかもしれません。 子どもに向き合うこと 保護者に向き合うこと 後輩に教えること 困っている同僚を助けること そこに、人が時間を使える職場を作る。そのためのAIなら、現場に入る意味はありそうです。 AIを入れることが目的ではない 100人インタビューは、AIを普及させるために行っている企画ではありません。現場に何が必要なのかを知るために、直接話を聞いています。 今回の話を聞いても、「すべてAIにすればいい」という結論にはなりませんでした。 個人情報の問題があります。新人育成の問題もあります。そもそも職場の人間関係という、AIではどうにもならない問題もあります。 ただ、「人がやらなくてもいい仕事に、人の時間を使いすぎていないか」という問いは、これから考えていきたいと思います。 AIに仕事を奪わせるのではなく、人間に時間を返す。そして、その時間を子どもに使う。今回のインタビューから見えてきたのは、そんなAI活用の形でした。引き続き、現場の声を聞いていきます。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738 -

保育園のデジタル化とは?「保育に向き合う時間を増やす3つの方法」
保育園では、連絡帳や登降園管理、保護者へのお知らせ、職員間の情報共有など、さまざまな業務でデジタル化が進んでいます。 保育園のデジタル化とは、これまで紙や手書き、電話などで行ってきた業務にデジタルツールを取り入れ、仕事を効率化することです。ただ、デジタルツールを導入すれば、必ず仕事が楽になるわけではありません。使い方によっては、かえって作業が増えてしまうこともあります。 大切なのは、デジタル化によって「何が楽になるのか」を考えることです。この記事では、保育園でデジタル化できる主な業務や、保育に向き合う時間を増やすための活用方法についてご紹介します。 保育園のデジタル化とは? 保育園のデジタル化とは、園内で行われている紙や手作業をデジタルツールに置き換え、仕事を効率化する取り組みです。 たとえば、次のような業務があります。 ・連絡帳・出欠管理・登降園管理・保護者へのお知らせ・職員間の情報共有・書類の作成や管理・写真の管理や販売 こうした業務をデジタル化すると、手書きや転記、紙の配布・回収などにかかっていた手間を減らせる可能性があります。使いにくいシステムを導入した結果、「紙とデジタルの両方に入力することになった」という状態になれば、むしろ仕事は増えてしまいます。 大切なのは「導入すること」ではなく、「現場の負担が実際に減ること」です。 保育園でデジタル化できる主な業務 では、具体的にどのような仕事をデジタル化できるのでしょうか。 1.連絡帳や保護者へのお知らせ 紙の連絡帳やお便りを、アプリなどでやり取りする方法があります。一斉配信ができれば、同じ内容のお知らせを何度も伝える手間を減らせます。保護者にとっても、必要な情報をスマートフォンなどから確認しやすくなります。 2.出欠・登降園管理 園児の出欠や登降園の時間も、デジタルで管理できます。紙に記入した情報を別の書類へ書き写したり、あとから集計したりする作業を減らせる可能性があります。毎日繰り返す仕事だからこそ、一回あたりの小さな負担を減らすことが大切です。 3.書類の作成・管理 保育園では、日々さまざまな書類を扱います。紙で管理していると、書類を作成するだけではなく、印刷、整理、保管、検索といった作業も必要です。デジタルで管理することで、こうした作業にかかる手間を減らしやすくなります。 4.職員間の情報共有 申し送りや予定、園内のお知らせなども、デジタル化できる業務の一つです。必要な情報を一か所で確認できるようになれば、「どこに書いてあるかわからない」「聞いていなかった」といった行き違いを減らすことにもつながります。 保育に向き合う時間を増やす3つの方法 デジタル化によって生まれた時間を、先生方が子どもたちと向き合う時間につなげていくことが大切です。そのために、まず見直したいポイントを3つご紹介します。 1.紙の仕事を減らす 同じ情報を複数の書類に書いたり、紙に記録した内容をパソコンへ入力し直したりしている場合は、デジタル化によって作業をまとめられることがあります。一つひとつは短い作業でも、毎日繰り返せば多くの時間を使います。まずは、何度も同じ内容を記入・入力している業務がないか確認してみましょう。 2.業務を見える化して、やめられる仕事を見つける 「どの業務に時間がかかっているのかを確認する」「似たような作業を何度もしていないか確認する」仕事を速くすることだけが業務効率化ではありません。「やらなくてもいい仕事を、やめること」も大切です。デジタル化をきっかけに、園の業務そのものを整理してみましょう。 3.保護者との情報共有をスムーズにする 保護者へのお知らせや予定の共有なども、デジタル化を活用できる業務です。一斉配信などを活用することで、連絡にかかる時間を短縮できる場合があります。保護者にとっても、必要な情報を確認しやすくなるというメリットがあります。こうした一つひとつの改善によって生まれた時間を、先生方が子どもたちと向き合う時間につなげていきましょう。 園の困りごとを整理するところから始めます 保育園によって、抱えている課題は違います。書類作成に時間がかかっている園もあれば、保護者との連絡や職員間の情報共有に負担を感じている園もあります。そのため、同じデジタルツールをすべての園に導入すれば解決するわけではありません。 SINTERASでは、まず現在の仕事や困りごとを整理し、どこに負担が生まれているのかを考えます。そのうえで、デジタル化したほうがいい仕事、やり方を変えたほうがいい仕事、なくせる仕事を整理していきます。 目指しているのは、デジタルツールを増やすことではありません。先生方が本来の保育に集中しやすい環境をつくることです。 まとめ 保育園のデジタル化とは、紙や手書き、電話などで行ってきた仕事にデジタルツールを取り入れ、業務を効率化する取り組みです。連絡帳や登降園管理、書類管理、保護者への連絡など、さまざまな仕事で活用できます。 ただし、新しいツールを導入するだけでは、職員の負担が減るとは限りません。「どの仕事をデジタル化するか」と同時に、「どの負担を減らしたいのか」を考えることが大切です。まずは、日々の仕事を振り返り、より働きやすくできるところから考えてみましょう。小さな改善の積み重ねが、先生方が子どもたちと向き合える時間を増やすことにつながります。 \ LINE公式アカウントで配信中 💬/ 📢 無料セミナー開催中最新のセミナー情報はLINEからご確認いただけます。 ▼ 友だち追加はこちらからhttps://line.me/R/ti/p/@607bbmym?oat__id=4783738